トラネキサム酸は、美容液や化粧水の成分表で見かけるうえに、薬局では内服薬としても売られている、少し特別な成分です。
そのぶん「化粧品と薬は何が違うのか」「飲んでも大丈夫なのか」と迷う人が多くなります。
この記事では、トラネキサム酸の成り立ち、化粧品と内服薬の違い、使い方の順番、相談したほうがよい人の目安を整理します。
トラネキサム酸とは
トラネキサム酸とは、1965年に止血剤として開発された成分です。
第一三共ヘルスケアの研究者の紹介によると、1988年に肝斑(かんぱん)の改善に関する論文が発表されたことで、美容の分野でも注目されるようになりました。
肝斑とは、頬などに左右対称にできやすい、うすい茶色のシミの一種です。
現在は、同じ成分が3つの形で出回っています。皮膚科で処方される薬、薬局で買える内服薬、そして肌に塗る化粧品類です。
名前が同じでも、この3つは別の話として考える必要があります。
化粧品と内服薬の違い
いちばん大切なのは、言えることの範囲が違うという点です。
内服薬は医薬品です。たとえば、第一三共ヘルスケアの「トランシーノII」「トランシーノEX」は、トラネキサム酸を肝斑改善の成分として配合した一般用医薬品で、効能は「しみ(肝斑に限る)」とされています。
一方、化粧品や薬用化粧品は、肌を整えるためのものです。病気や症状を治すとは言えません。
化粧品の場合は「期待できる」「といわれている」までが、表現の範囲になります。
そのため、広告やSNSで「飲んだら変わった」「塗ったら消えた」といった言い方を見かけたら、内服薬と化粧品の話が混ざっていないか、いったん立ち止まって確認してみてください。
- 肌に塗る
- 肌を整える目的
- 治すとは言えない
- 飲む医薬品
- 肝斑に限る効能
- 用法・注意点が決まっている
市販の内服薬を使う前に知っておくこと
薬局のトランシーノは、リスク区分が第1類医薬品です。薬剤師から説明を受けたうえで買う種類で、買う前に説明書の確認が必要です。
PMDA(医薬品医療機器総合機構)に載っている添付情報では、次のような点が示されています。
- 1回2錠を、1日2回服用する
- 透析療法を受けている人は服用しない(けいれんがあらわれることがあるため)
- トラネキサム酸を含む他の内服薬と併用しない
- 医師や歯科医師の治療を受けている人は、服用前に相談する
ここで押さえたいのは、自己判断で量や期間を決めないことです。
シミの種類は、肝斑のほかにもいくつかあります。見た目だけで見分けるのは難しいため、気になるときは皮膚科で診てもらうのが近道です。
化粧品としての使い方と順番
化粧水や美容液に配合されたトラネキサム酸は、毎日のスキンケアに組み込んで使います。
基本の流れは次のとおりです。
- 洗顔のあと、化粧水で肌を整える
- トラネキサム酸配合の美容液を、表示された量だけなじませる
- 乳液やクリームで保湿のふたをする
- 朝は最後に日焼け止めを重ねる
量を増やしても、実感が早まるとは言い切れません。製品の使用方法を優先してください。
効果の見方は、肌の生まれ変わり(ターンオーバー)の周期が目安になります。一般に28日前後で、年齢とともに長くなるといわれます。
まず1か月、できれば2〜3か月は、同じ使い方で様子を見ます。途中で製品を替えると、何が合ったのか分からなくなります。
感じ方には個人差があります。
朝は日焼け止めまでがセットです
ほかの成分との組み合わせ
トラネキサム酸は、ほかの成分と組み合わせて使われることが多い成分です。
くすみや毛穴が気になる朝のケアなら、ビタミンC誘導体の種類と使い方で整理した成分と並べる考え方があります。
肌のうるおいと整えるケアには、ナイアシンアミドの効果と使い方の記事のように、刺激が出にくいといわれる成分も候補です。
夜にレチノールの使い方と順番のような攻めの成分を使うなら、同じ夜に重ねすぎないよう、日を分けるのが基本です。アゼライン酸の効果と使い方も同じで、1つずつ慣らしてから足してください。
どれを選ぶ場合も、足すのは1つずつが原則です。荒れたときに、原因を探しやすくなります。
つまずきやすいポイント
トラネキサム酸まわりで多い勘違いは、次の3つです。
1つめは、化粧水を使いながら、市販薬も同時に始めてしまうことです。目的が同じでも、塗るものと飲むものは別の手段です。同時に始めると、どれが合ったか分かりません。
2つめは、日焼け止めを省くことです。紫外線は、シミが気になる肌の大きな要因といわれます。どの成分を使っていても、基本の紫外線対策は欠かせません。
3つめは、数日で結論を出すことです。肌の生まれ変わりを考えると、1か月は見る必要があります。
土台になる保湿と紫外線対策は、美肌の決定版ガイドで整理しています。睡眠や食事の乱れも肌に出やすいといわれ、腸内環境との関係は腸活と美肌の関係を整理した記事も参考になります。
自分の肌の状態を見直したい人は、1分でできる肌老化リスク診断でチェックしてみてください。
相談したほうがよい人の目安
次のような場合は、使う前に医師か薬剤師へ相談してください。
- 皮膚科や他の診療科で治療中の人
- ほかの内服薬を飲んでいる人
- 透析療法を受けている人
- 妊娠中や授乳中で、使うものに不安がある人
- 化粧品で赤みやかゆみが出やすい人
化粧品を使い始めるときは、腕の内側で少量を試すパッチテストをおすすめします。
使用中に赤み、かゆみ、ヒリヒリ感が続くときは、いったん中止します。症状が強いときは、受診してください。
よくある誤解
「トラネキサム酸は、塗っても飲んでも同じ」と言われがちですが、化粧品と内服薬は別のものです。言える効能の範囲も、守る注意点も違います。
「市販薬だから、自由に飲み続けていい」と言われがちですが、第1類医薬品で、用法や相談の目安が決まっています。自己判断で続けず、気になることは薬剤師や医師に確認してください。
「飲めば早く変わる」と言われがちですが、感じ方には個人差があり、早さを約束するものではありません。シミの種類によっても違います。
「シミにはトラネキサム酸が一番」と言われがちですが、シミには種類があります。見た目で決めつけず、気になるときは皮膚科で診てもらうのが確実です。
まとめ
トラネキサム酸は、1965年に止血剤として開発され、1988年の肝斑の論文をきっかけに美容分野でも知られた成分です。
化粧品と内服薬は別物です。化粧品は「肌を整える」範囲で、1か月、できれば2〜3か月、同じ使い方で様子を見ます。
内服薬は第1類医薬品で、薬剤師の説明と添付文書の確認が前提です。透析中の人、ほかの内服薬がある人、通院中の人は、使う前に医師か薬剤師へ。
シミや肌のトラブルが続く場合は、専門家・医療機関にご相談ください。



